前回、米子駅の南北自由通路開通に関わる地元紙の特集記事が
連載されたことを受けて、私の知る経緯と、私自身が訴えてきた
米子駅南北一体化が、交通結節点の高度利用と配置による移動効率の良い
都市機能の再構築としての構想であることを改めてご紹介しました。
連載記事の3回目は「経済効果」に視点をおいた記事が載っていました。
南北自由通路「がいなロード」は市道であり、歩行者と自転車が行き来する
道であり、JR、バス、タクシー、店舗などの利用のため人が行き来し、
南北それぞれの機能をどちらからでも使えるようにするものです。
この度の南北一体化は、市道で結び南北をバリアフリー化して、交通機関や
駅機能を使うだけではなく、これまで「駅裏」と呼ばれ土地の利用が
住宅地に偏重していた駅南地区の土地利用の可能性を広げると共に、
交通結節点の高度利用を360度から展開できるようにする街の中心軸の
整備による「まちづくり」の再構築です。
この度の連載記事の最後に、米子高専の片木名誉教授のコメントを載せていました。
「がいなロード」の経済効果について「当面は期待できない」と指摘。
「南北一体化が先行した鳥取駅、松江駅と比較して米子駅南側は山が迫る
狭い市街地が住宅で埋まっており」「開通目前となっても民間の動きは感じられず」、
「市民の関心は低いのでは。」「経済効果を考えるなら市民の声を聞かなければ」と
説いたと記載されていました。
この事について、反論しておきます。
先ず、「鉄道駅高架」によって南北一体化が先行した鳥取、松江との比較の部分です。
簡単に申し上げると、鳥取駅と松江駅は、高架によって南側が発展したのでしょうか?
高架はあくまでもバリアフリー化で、鳥取も松江も南側の都市機能構築の視点に欠け、
ビジョンと実行が進まなかったため、あまり都市機能としての変化が起きていません。
鳥取は最近になって駅北のバスターミナルの問題が議論されました。
松江の南側はほとんど変化しておりません。
これらは米子もかつて考えていた古い再開発の発想で、自治体の財政が厳しい状況に
なってからは、再開発は限定的となります。民の動きが活性化しなければなりません。
米子駅の南方面には山がありますが、その平地の広さを問題視するレベルではなく、
住宅地が埋まっているとの事ですが、その密度は低く、これも「駅裏」の影響。
駅利用が出来るようになると、当然、固定資産の評価も変わり、道路沿いの土地利用に
変化をもたらします。つまり、住宅地の適地ではなく、商業などの適地と変化します。
それを促進するためのビジョン、イメージを示すことは勿論大切で、これが鳥取や
松江には不足していました。
加えていえば、全国の例でみても、駅のどちらかが米子より狭隘なところは多数
ありますが、都市機能を持ち、都市の活性化に役立つエリアとなっている
所はいくつもあります。つまり、広さの問題よりも土地の活用形態なのです。
次に「開通目前になっても民間の動きが無い」という部分。
この方は現在の経済の状況を理解されておられるのでしょうか?
コロナで傷んだ状況、投資的な動きに慎重になっている状況などなど、
この間に打って出られる事業者がそんなに存在したと思われているのでしょうか?
最後に「経済効果を考えるのなら市民の声を」という部分。
これについては、市民の声を聞くのは当然で、これは行政としてはアタリマエの話。
それより「市民の声を」は都市工学の学者として言う事でしょうか?
専門的な研究成果を蓄積した学者に求めるのは、科学的根拠に基づいた論理的提案です。
発展が期待できないという名誉教授の発展とはどんな発展なのでしょうか?
そしてそれはどうすれば実現されるのでしょうか?それを示すのが学者の役割です。
そもそも経済の事を専門外の学者に求めること自体が首をかしげますが、
何とか米子を「住んで楽しい」「持続可能な活力ある」地方都市とするために
前向きに考え、懸命に努力している人たちの動きに水を差すようなことは如何な
ものかと思います。
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by kandamachi
| 2023-06-19 16:57